高野孝子の
地球日記

デナリ国立公園の特別な案内人(続)

 デナリ国立公園の山の頂からの光景。
 ジニーとシリアと一緒だったこと、そして私がキャンプデナリとノースフェイスロッジ(キャンプデナリと同じ経営の宿。キャンプデナリの南西方向下った所にある)のお客さんに講演をするという約束で、この二つの宿がどんなふうに宿泊客にサービス(環境教育プログラムを含めて)をしているのかをかいま見ることができました。

 いずれも最低でも3泊もしくは4泊が条件で、すべて込みで一日一人345ドル(4万円強)。
 高額ですがそれだけのものを提供するという信念です。私が話をしたすべての人が、大変満足しているようでした。
 初日はまず公園の入り口から、宿専用のバスで運転手兼ガイドが解説をしながらゆっくり走ってきます。宿はちょうどパークロードの終点近くにあるので、7時間ほどかけて走ってきて川辺でBBQの後、宿に到着。

 翌日からは、ヘリコプター観光も含めて、3,4つのプログラムが提供されます。自然観察をしたい人、中程度のハイキング、体力を要するハイキングなどです。もちろん独自で何かをしたい人には、スタッフがていねいにアドバイスや装備の提供をします。
 私がいたときのお客さんたちの中には、結婚の何十周年記念というカップルが幾つもありました。多くは年配の人たちでしたが、20歳代のキャリア女性もニューヨークから来ていました。数日間、一緒にプログラムに参加したり食事を取るので、大きな家族のような明るい雰囲気になるようでした。

 食材には自分たちで育てているオーガニックの新鮮な野菜を使い、パンも自家製、主要なシェフはフランスの料理学校で勉強した女性でオーナーの息子のフィアンセ。 とにかく味も材料もぜいたくな、そんじょそこらのレストランでは食べれない素晴らしいものでした。
 お昼は行動食を各自が作るのですが、この材料もまた見事で、通常のキャンプでは一日1000円の予算で三食をまかなっている私たちエコクラブのものとはまったく違っていました。
 けれども、食べ物を残さないように、ナプキンは汚れないかぎり3日間同じものを使うようになど、環境に配慮するポリシーは徹底しており、お客さん達にも協力をよびかけます。

 図書館やラボがあり、デナリの自然について幅広い知識や情報を得、探すことが可能です。
 夜の特別プログラムでは、ガイドやゲストがさまざまな角度からデナリや北アメリカ大陸にちなんだレクチャーをします。
 キャンプデナリでは環境教育プログラムディレクターを設けて、独自にやってきた客以外にもプログラムを提供し始めています。
 経営が同じため、スタッフは両方のホテルで働きますが、合わせて5,60名はいる と思われるスタッフは圧倒的に若く、多くは学生のアルバイト。中には両親、もしくは親のどちらかがここでアルバイトをしていたという「二代目」スタッフも何人もいました。冬は南極のスコットポーラー基地(南極点にあります)で重機を動かしているという女性が、オーガニック野菜の育ての親でした。熊の研究者や生物学者、プロとして自然観察ガイドを何年もやっているスタッフも混ざっています。
 スタッフトレーニングはしっかりしていて、お客さんへの対応はていねいかつ適切でした。

 「過酷なハイキング」というランクのプログラムに参加しました。
 キャンプデナリの裏側の山に登り、稜線にそって歩いてくるものです。
 「スノボをしているのが一番好き」というモンタナからの学生ガイドでしたが、ツンドラの生態系から始まり、クマは鈴などの音に興味をもってかえって寄ってくるという話や、ローインパクトの哲学や鳥など、折に触れてさまざまな解説をその場にあるものを使ってしてくれました。花やカリブーについて、お客さん達が本当にいろいろな質問を投げてくるのですが、見事に対応していました。

 ガイドと一緒に公園の中を歩く。
 最初は湿地帯で敷かれた板の上を歩いていたのですが、だんだんとコケや地衣類が増え、岩場も出てきました。もう木と呼べるものはありません。ゆっくりとたどり着いた稜線からは広大な光景が広がります。デナリ山はちらりとしか山頂を見せてくれませんでしたが、アラスカ山脈と湖、森、ツンドラ、雲、、。ここに鉄道が引かれる計画がある、とガイドが話し、しばらく開発に伴うポリティクスや富の偏在といった議論が参加者の中で交わされました。

 surf birdsという絶滅に瀕した鳥がここには生息すると聞いた次の瞬間に、その鳥が目の前にいました。結局同じ日に数羽も「珍鳥」にお目にかかりました。
 とにかく蚊がひどくて、なかなか説明に集中して聞いていられません。これまで使ったことのなかった頭からかぶる蚊よけのネットをかぶるとささやかな平和がやってきます。シャツの上からバシバシ刺されるので、とうとうゴアテックスのジャケットを着込みました。今年は特にひどいとジニーたちが言っていました。

 公園に入った日はものすごく暑く乾燥していて動物も活動していませんでしたが、翌日にはみんなが「待っていた」という雨が降り続き、その次の日は快晴、そして最終日は雨がちでした。おかげで帰りのパークロードでは来たときよりもたくさんの生き物が生活している様子を見ることができました。
 (6月28日)

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