高野孝子の
地球日記

エジンバラの夏祭り

 エジンバラの旧市街地には、何百年も前からの建物が並び、いまもきれいに使われている

 私が今暮らすスコットランドのエディンバラでは夏祭りが世界的によく知られているらしい。
 エディンバラという場所について知識がある人のほとんどは、「エディンバラ国際フェスティバル」と大みそかの「ホグマネー」について聞いたことがあるはずだ。

 この夏祭りは約三週間続き、今年は9月1日に終了した。最後の締めくくりは、エジンバラ城をバックにしてクラシック音楽の生演奏に合わせて花火が舞う、思わず息をのんでしまうような素晴らしい演出だ。
 これまでたくさんの人たちが夏祭りについて、興奮しながら「とにかくすごいんだよ、最高なんだ」と語ってくれたが、いまいち全体像がつかめずぴんと来なかった。

  今年始めて、祭りの最後の一週間近くを体験したが、これまで話を聞いても全体像がつかめない理由がようやくわかってきた。とにかく規模が大きく、複雑で多様なのだ。

 スコットランド伝統のバグパイプの路上演奏
 戦後すぐに始まったものがだんだんと発展し、今では国際フェスティバル実行委員会が企画する「オフィシャル」なものの他に、「ジャズ祭」「ブック祭」、軍の楽団がスコットランド音楽を演奏する「ミリタリータトゥ」「フィルム祭」、そして「フリンジ」と呼ばれる各種のパフォーマンスの祭りなどで構成される。プログラムに載らない大道芸人も街にあふれ、辻々に人垣ができて笑い声が爆発する。

 オフィシャルなプログラムは、すでに名声が確立している伝統芸術が招待されて公演する。例えばニューヨークシティバレエやボストン交響楽団などだ。チケットもすぐに売り切れるけれど、とにかく多くの人たちが興奮するのは、素人玄人含めたさまざまなパフォーマンス「フリンジ」の方だ。

 通りのあちこちで繰り広げられる大道芸
 こちらは招待というよりは自分たちで集い、自由に公演する。1960年代にはわずか数十だったというが、今年は49カ国から約660グループが参加し、期間中の予定をまとめた冊子は176ページもある。子ども向けのショーからコメディ、踊り、各種の音楽、絵画や写真、お芝居などだ。

 内容やレベルは地元の人たちに言わせるとピンキリで、行って後悔するほどひどいものもあるそうだ。500円くらいからせいぜい2000円くらいでほとんどの公演に入れる。約一週間ほどしかいなかった私は、口コミで、サルサの演奏、踊りとスコットランドの伝統音楽に出かけた。どちらも会場と舞台が融合したダイナミックで見事なパフォーマンスだった。その流れでついつい、後日そのバンドのキューバ人ダンサーにサルサの基本を教えてもらった。

 日本から来て公演しているグループも多々あったが、私個人の意見としては芸術というよりは性的で気持ち悪いものとサムライをネタにしたうすっぺらいものが多く、それらが「ジャパン体験」とされているのが残念だった。

 一方で和太鼓の演奏で人気を博しているバンドは、なんと地元スコットランド人たちのグループだという。道端では、胡弓を演奏して絶賛を浴びている中国人や、キルトというスコットランドの民族衣装を着てバグパイプを吹いている人がいる。

 日本人といっても今は笛や和太鼓を叩ける人の方がかえって珍しい。ひょっとしたらより多くの人が、エクスタシーだ肉欲だと言っているパフォーマンスに共感を覚えるのだろうか、今の日本人の誇りやアイデンティティって何だろうかとしばし考えた。
(9月2日 東京にて)

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