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| エジンバラ市東部のホーリールードパーク。数億年前に活発だった火山跡。背景にエジンバラ城を中心とする街並みが広がる。 |
エジンバラのお正月
12月末にお知らせした「エジンバラ・ライブカメラ」が好評でした。
天気が悪かったり、夜が長いので変化が欲しかったりして、たまに家の中に向けたりしていました。日本の午前5,6時の時間ですが大前や私が写っていた瞬間が実はありました。もうしばらく続けて、季節が変わったらまたあらためて出してみようかと思ったりしています。
私たちは「英国」を一つの国と扱ってしまいますが、英国は正式には連合王国「The United Kingdom」と呼ばれ、イングランド、スコッ トランド、ウェールズそして北アイルランドの連合国家です。国際政治ではブレ ア首相率いる一つの政府で外交や防衛政策を決定しますが、そもそもこの四つは別の国です。
英語ではそれぞれをホームネイションと呼び、議会や統治機構も異なり、税金や保険・教育制度、何と通貨紙幣や法律も違うのです!大多数の人が英語を話しますが、イングランド以外では古くからの言語であるウェールズ語やゲーリック語の再教育が重視されてきています。ここ10数年、世界的に民族意識が高まり、抑圧を受けたり支配されてきた人々の意識が変わってきていますが、スコットランドでも同様です。
英国には多様な人種や宗教を持った人たちが暮らしますが、表向きはキリスト教国家です。ですからクリスマスがもっとも大事な祝日です。けれどキリスト教徒が多くを占めるにもかかわらず、伝統的に大晦日の方を重視して祝うのがスコットランドです。ブリテン島の北部を占めるスコットランドは、ケルト文化の影響を強く受け、食べものや音楽、伝統的な衣服も独特です。
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| 大みそかのエジンバラ。10万人以上の人で幾つかの通りがごったがえす。後ろにエジンバラ城。 |
スコットランドでは12月31日を「ホグマネー(Hogmanay)」と呼びます。日本語で「おおみそか」と言うのと同じですね。「新年の贈り物」というような意味だそうで、冬は日照時間がわずか数時間しかない北の地域で、昼間の光を待ち焦がれる古代からのお祭りの時です。
集落によって祝い方は異なりますが、基本的には家族や友だちとごちそうを食べ、スコットランド音楽に合わせて踊り、時計が12時を打つと歓声と共にそれぞれ抱きあったりキスをしあい、その後もひたすら飲み、歌い、最後の人が倒れるまで続く、という感じでしょうか。「命の水」の意味だというウィスキーを手に、家々を訪ねて歩く習慣もあります。みんなが腕を左右に交差してつなぎ、スコットランドの詩人ロバート・バーンズが書いた「蛍の光」を歌うと、中締めです。ともかく大みそかはスコットランド中が大騒ぎとなります。
イングランドでは銀行も役所も1月2日から仕事ですが、スコットランドでは1月3日からです。「頭痛や疲れから回復する時間が必要だからね」とみんな理由をにっこり教えてくれます。
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| St.ジャイル大聖堂の中でBTスコティッシュアンサンブルによるコンサートがあった。バッハの曲が演奏されたオルガン。 |
エジンバラのような都市ではここ10年ほど、ホグマネーは派手で大きな祭りに変化してきています。
私は去年はスコットランド北西部の湖岸に、子どもを含む友人ら16名と集まって過ごしましたが、今回はエジンバラでの時間をじっくり楽しみました。
12月29日から1月1日まで、エジンバラでは市を上げてのさまざまなパーティがあります。
臨時遊園地ような設置型の会場から、古い教会でのコンサート、バグパイプの集団が町を練り歩きつつの演奏などさまざまです。感心するのは、18世紀の街並みを残す人口45万人の都市で、道路封鎖を含む複雑なオペレーションが次々に粛々と行われること、一つ一つのイベントの質が高く、かつしっとりと芸術的であること、無料や数百円で関われるものが多いこと、参加型インタラクティブ型が上手に回っていること。加えて人々がじつに楽しそうで、受け身ではなく自ら関わっていくこと。露骨な商業主義が見えないのもほっとします。私欲を離れた祝いの空間です。
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| バグパイプ行進の先頭でスコットランド王家の旗を掲げて歩いていたスコッツマン。「イングリッシュの女王をもらってはいるが、スコットランドの旗は必ず一緒だ」と誇りをのぞかせた。民族衣装のキルトについても教えてくれた。薄井さん家族と。 |
エジンバラが得意なのが、ストリートパーティです。道路一本がそっくりパーティ会場となり、そこでいろいろなことが起きます。すべてインタラクティブです。パフォーマーたちも芸を見せるというよりは、通りを歩いている人たちを捕まえて時には言葉なしのやりとりをしながら、それそのものがパフォーマンスになっていきます。ダイナミックに道路上を動きながら、自分たちのステージを変え客と関わっていく空間の使い方は見事です。
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| ストリートパーティでのパフォーマンスの一つ。とにかく楽しい |
もう一つエジンバラがすごいのは、花火。
約一ヶ月続く夏祭りで、クラシックコンサートに合わせて花火が踊る芸術も素晴らしいのですが、ホグマネーのクライマックスの花火は、すごいというよりもすさまじいというのが私の今年の体験でした。
エジンバラ市内にある7つの丘から、零時に同時に花火を上げるのがエジンバラ流新年の祝いです。確かおととしからの試みです。今年はなんとか、それの幾つかでも見てみたいと思い、打ち上げ場所の一つでもあり市全貌が見渡せる南の方の丘に出かけました。
午後11時半。エジンバラに来てからツルんでいる薄井さんご一家と一緒に、暗がりの中の山道を頂上に向かいました。林を抜けると岩と草ののっぺりとした斜面になります。いろいろな方向から人々がわさわさと集まってきているのがわかります。用心はしていたものの、風が冷たく、耳が凍えそうです。体感気温は十二分に零下です。
「この丘の打ち上げ場所はどこなんだろうね」「きっとあっちの駐車場の方だよ。人が近くにいないような」などと言いながら、いい位置はどこだと探しつつあちこち動き、少なくとも4カ所の花火は見えるだろうという場所で落ち着きました。あー寒いと体をこわばらせながら打ち上げ場所の一つ、エジンバラ城の方を向いていました。近くで急にバグパイプの音が聞こえてきました。誰かが持ってきたのでしょう、なかなかいい雰囲気です。
「あと1分!」どこかで聞こえました。期待が高まります。「ねえ、あと何十秒?」と、時計にランプがつくようになっているあきくんを振り返ったその時。シュバッ、ブォッーン!バアーンバンバンバンッ!
打ち上げ場所は私たちが立っていた斜め後ろ数十メートルの所でした。
花火を鑑賞するどころか、まずその轟音に動揺し、真上で爆発する花火をのけぞって見、降りかかる火の粉に仰天し、煙にまかれつつみんなでわけのわからないことをわめき叫んでいたように思います。
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| 真上から落ちてくるような花火 |
それでも正面に向き直ると、お城から本当に花が咲いたような色とりどりの花火があがっており、後ろの丘からグルリと数えたら・・・なんと7カ所すべてが見えて(自分たちがいた丘のは、見たと言っていいのかわかりません)いました。
それぞれ異なるデザインの花火でしたが、終わりはすべて金色の枝垂れ柳。大きな大きな円形状の柳の枝が一つ一つ、チラチラと音を立てながら静かにゆっくりと闇にまぎれていきました。こういうのを英語で"AWESOME!!"って言うんだと、心の中で叫んでいました。上空の爆音で気もそぞろでしたが、ほんとうに見事なショーでした。
約4分。7000発の花火だったそうです。
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| エジンバラ城の前で上げられた花火。本当にお花のよう |
だれもが圧倒されていたからでしょう。だいぶ時間をおいてから、「ハッピーニューイヤー!」の歓声があちこちから聞こえ、私たちもあわててビールとジュースで乾杯をしました。通常ならある蛍の光大合唱も、みんなに抱きつきキスするイベントもなく、とにかく「すごい」の思いでみなが下山しました。
アパート近くに戻ると、今度は花火を見終えて街の中心部から戻ってきた人たちがたくさん歩いていました。それぞれ「ハッピーニューイヤー!」と掛け合い、男性同士は握手か抱きあい、男性は女性にキスをしながらすれ違っていきます。私も車を降りてアパートの中に入るところで、スコットランドの民族衣装のキルトを着けた若い男性3名から「ハッピーニューイヤートウユー!アブソルートワン!」と投げキスをもらってホグマネーを締めくくりました。そうそうちゃんと年越しソバも食べました。新潟県十日町からいただいた小嶋屋ソバです。
1月1日はまたコンサートやストリートパフォーマンス、ハスキーレースなど盛りだくさんです。多くの人たちが昨晩のパーティから回復中だと思いますが、知人がトライアスロンレースに出るので出かけてみました。350人の出場者。みぞれまじりの雨の中、半ば裸の選手たちの肩は真っ赤になっていました。
朝は国際電話で母に味付けを確認してからお雑煮を作り、これから薄井一家をおまねきして元旦のディナーとなります。サケがどこも売り切れだったので、なぜかショウガ焼きポークステーキというメニューになりそうです。(2003年1月1日)
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